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映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」…ケン・ローチ監督らしさ一杯.


原題:I, DANIEL BLAKE  
制作年:2016年 制作国:イギリス /フランス/ベルギー 上映時間:100分



日曜の2本目は昼食を取るのももどかしく、新宿武蔵野館へ飛び込む.
都心でしか観ることが出来ない作品をむさぼるように観ていく.
好きな監督の社会派ドラマを本年累積45本目に鑑賞.

社会派の名匠ケン・ローチ監督が、格差と分断が進む世の中で切り捨てられよう
としている社会的弱者の心の叫びを代弁し、カンヌ国際映画祭で「麦の穂をゆらす風」に
続く2度目のパルム・ドールを受賞した感動のヒューマン・ドラマ.

実直に生きてきた大工職人が、病気をきっかけに理不尽な官僚的システムの犠牲となり
経済的・精神的に追い詰められ、尊厳さえも奪われようとしていた時、同じように苦境に
陥っていたシングルマザーとその子どもたちと出会い、互いに助け合う中で次第に絆が
芽生え、かすかな希望を取り戻していく姿を力強い筆致で描き出す.

主演はイギリスの人気コメディアンで、本作が初の映画出演となるデイヴ・ジョーンズ.
共演にヘイリー・スクワイアーズ.
 
イギリス北東部ニューカッスル.59歳のダニエル・ブレイクは、長年大工として働き、
妻に先立たれた後も、一人できちんとした生活を送り、真っ当な人生を歩んでいた.

ところがある日、心臓病を患い、医者から仕事を止められる.仕方なく国の援助を
受けるべく手続きをしようとすると、頑迷なお役所仕事に次々と阻まれ、ひたすら
右往左往するハメに.

すっかり途方に暮れてしまうダニエルだったが、そんな時、助けを求める若い女性に
対する職員の心ない対応を目の当たりにして、ついに彼の堪忍袋の緒が切れる.

彼女は、幼い2人の子どもを抱えたシングルマザーのケイティ.これをきっかけに、
ケイティ親子との思いがけない交流が始まるダニエルだったが….

以上は<allcinema>から転載.
―――――――――――――――


この映画館、新装なったにもかかわらず、鑑賞環境は何ら進歩が無い.
フラットに近い座席環境、要は傾斜が少ない.前に座高が高い人が座ると後頭部が
スクリーンの邪魔をする.今回はまさにそんな座席にぶつかってしまった.

スクリーンの下1/4が観えない…字幕の部分もだ.背伸びしたり体をずらしたり、
せわしないことおびただしい.いまどきこんなクソな映画館は珍しい(怒).
出来るならこの映画館は避けたい気分なのだが、ここしか演ってなければしょうがない.

邦題は原題のそのままの訳.下手な題名考えるよりずっと良いと思う.
偏屈な老人と杓子定規な公的機関、そして幼子を連れた女性との絡み…となると
最近公開された「幸せなひとりぼっち」との類似性が気になるところ.

本作の方がよりその公的機関への反発姿勢が明確でしかも辛辣である.
それにしてもここに描かれる英国の社会保障機関の杓子定規ぶりは酷い.
決められたルール、フォームへの記入要綱から少しでも逸脱することを嫌う.

たとえ陳腐な間違ったルールでもだ.例外を嫌う気持ちも判らんでもないが、
受け身の立場、顧客の立ち位置からの目線が欲しい.作中に出てくる警察やスーパーの
万引き担当の方がよほど抒情酌量の感覚を持ち合わせているのが皮肉でもある.

これは根本的な顧客観点が抜けていることと、各自担当に裁量権を与えていない
ことによる.硬直化したお役所主義の典型であろう.事実主人公に対し同情を持つ
担当者は、何かと手をかけてくれようとするが、上司はそれを咎めるばかり….

主人公は心臓を病んで医者からも就業を止められているのに、勤め先を
得るために履歴書を書けというお馬鹿な指導には呆れるばかり.
こんな役所要らない.ケン・ローチ監督の覚めた目線の表現はクリアだ.

むろん、主人公や親しみを持って接するシングルマザーの側にも非は存在する.
どうみても短絡的で判断ミスと思える行動も見られるのだけど、情状酌量する
余地があるし、観客がそれを非難する権利は無い.

前に述べた「幸せのひとりぼっち」とは決定的な違いが一つある.
それは主人公の亡くなった奥さんが「幸せの…」は素晴らしい善人であったのに、
本作では全くの悪女だったらしいこと(笑).

でも主人公はその妻の想い出を語る時、とても幸せな表情を見せる.
気まぐれで破天荒な性格であったことを懐かしみ、愛おしくてしょうがない表情を
見せるシーンにほだされてしまった.悪い妻ほど愛するにふさわしい?

病んだ妻の介護も相当な苦労だったことが本人の口からも伝え聞くことができる.
この人、本当に苦労人なのだ.

あらかたの予想通り、主人公は心臓発作で突然死してしまう.
公的機関への恨みつらみを残して….

お役所仕事をしている方々に是非とも観ていただきたい作品.








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コメント

非公開コメント

No title

> オネムさん
あぁそんなに怒らないでくださいよー.どこかで観られると良いですね.でも、DVDでも十分にこの怒りは味わえると思います.
ナイスありがとうございます.

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> じゃむとまるこさん
たしかに意外性のない脚本ではありました.この方がストレートに想いが伝わるという配慮かとも考えましたが、単にケン・ローチ監督の“老い”なのかもしれません….でも、いぶし銀みたいな輝きをもつ作品と思います.ナイスありがとうございます.

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いまだに傾斜の少ない映画館ってあるんですね(・ω・`;)
お疲れさまでしたナイス。

No title

> 流浪の民さん
小さなシアターでもかなり傾斜はついているのですが、ここはほとんどフラットなんです(泣).今回は厳しかったぁ….
なぐさめのナイスありがとうございます.

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考えてみると、どうしても伝えたいという思いからあえてストレートな演出にしたのかもしれませんね。
TBお願いいたします。

No title

> じゃむとまるこさん
年取ると難解な方向に走る映画界において、好ましいかとも思います。
コメありがとうございます。

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有楽町に行けばよかったですね。
こん回の監督作品は、感動の視点ではなく、社会批判にだいぶ重きを置いた作りでした。共感こそできますが、ちょっと救いのないドラマでしたね。
後ほどTBお願い致します。

No title

> atts1964さん
そうですね。次回からはそうしましょう!
確かにストレートな直球でしたね。しかと受け止めた気がしました。
ナイスありがとうございます。今出先なので帰宅後トラバしに行きますね。

No title

こんばんは。

新宿武蔵野館は東京に住んでいたとき、よく通っておりましたが(ここでしか上映が無い映画が多かったので)、新装されても良くなっていないというのは辛いですね。

カンヌパルムドールやケン・ローチ監督作ということで、とても興味のある映画です。
苦しんでいる人に手を差し伸べることの大切さが描かれている作品のようですね。
そのような世の中や社会になってほしいと願うことはムリなのかもしれませんが・・・。

No title

> kurohyo:rさん
ご覧になれると良いですね.
ナイスありがとうございます.

No title

これは観たいのですが、毎度ながらおらが村では公開なさそうです(泣!)。
鑑賞したら再度お邪魔します!

No title

> 風森湛さん
もしご覧になれたら感想寄越して下さいね、楽しみにしてます ♪
ナイスありがとうございます。

No title

どこの国でもお役所仕事があるのですよねぇ。
ラストはああするしかなかったのだとは思いますが、違う展開も見てみたかったかもと思いました。
ただ、監督の思いはすごく伝わる作品だったと思います。
TBお願いします。

No title

> やっくるママさん
そう、監督の主張はガンと伝わって来るのですが、哀しすぎますよねぇ.ナイスとトラバありがとうございます.

No title

決して他人事ではないと感じました。
弱者を守るための制度が逆に弱者を切り捨てているような実態は決して見過ごしてはいけませんね。
TBお願いします。

No title

> かずさん
その人の立場になる…公僕だけでなく、普遍的なとても大事な事だと思うのですが、なかなか実現できない腹立たしさを感じます.そう他人事じゃありませんよね.トラバありがとうございます.

No title

確かにスーパーの人の方が人情がありましたね。ストレートな映画は感情的になってその時はいいんですが、現実はもっと複雑で、でもそれでも何か言わないといけないという使命感みたいなものがあったのかも、ですね。TBしますね。

No title

> shi_rakansuさん
そう複雑で、解が無くて、どうしようもないですが….
こういう作品は貴重ですよね.
トラバありがとうございます.

No title

こんにちは。
DVD鑑賞して3週間も書き出せないでいました。
今年観た映画の中で一番心が折れました。
杓子定規にならざる得ない側面(不正受給)も分からなくもないですが
とにかくダニエルやケイティみたいな人が苦しむのは惨いです。
TBさせてください。

No title

> 風森湛さん
確かに心折れる物語でしたね。ケンローチ監督らしい、シニカルな鋭い視線が痛いようでした。他人事じゃない、日本も同じ…の思いがしてしまうのは、哀しいことであります。
ナイスとトラバありがとうございます。

お礼

貴方が推奨していたので、メモしていたのですが、今日ようやくDVDを見ました。いい映画でした。私が年金でのうのうと暮らしているのが申し訳なく思えて来ました。
最近、ブレイディ・みかこのイギリスの下層階級の生活のノンフィクションを何冊か読んでいるのですが、イギリスはもう病んでいますね。
日本はどうなんでしょうね。

Re: お礼

>豊栄のぼるさま
どういたしまして.ケンローチ監督はイギリスの 社会派監督.
他にも、イギリス社会の隅を突くような作品が多々あります.
興味あればお勧めの監督さんですよ.